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LSD-17  FR車のインリフトによる空転を防止する

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今回は、「FR車のインリフトによる空転を防止する」についてお話しします。
空転を防止する対策のひとつにLSDの調整があります。その調整方法、効果、手間、デメリットなどをご説明します。

 

■空転の原因
片方のタイヤにかかる荷重が小さくなって、駆動力を路面に伝えることができなくなると空転します。例えば、小さなコーナーを旋回しているときに車がロールして内輪が路面から浮いたときに空転が発生します。内輪が路面から浮かなくても荷重が小さくなるだけで空転が始まることもあります。 

 

■LSDによる空転防止策
1.LSDのイニシャルトルクを大きくすることで空転を防止できます。必ず空転が起きるようなコーナーであっても、そのコーナーを通過するのに必要な駆動トルクよりも大きなイニシャルトルクを設定すれば空転しなくなります。
その理由は、イニシャルトルクが空転を防止しつつ、荷重のかかっている片方のタイヤがイニシャルトルクの範囲内の駆動トルクでその場を脱出することができるからです。

 

2.イニシャルトルクが空転に影響するため、コーナーを通過するときの駆動トルクが大きいほど空転しやすいです。例えば3速より2速の方が空転しやすいということになります。
3.コーナー進入時の車の惰力はコーナーを通過するのを手助けしますが、惰力が小さいほど空転しやすくなります。

 

4.例えば、カムを45度から60度に変えても空転を防止効果は期待できません。その理由は、空転しているとカムがまったく機能しないからです。

■必要なイニシャルトルクの大きさの決め方
空転しやすいコーナーの脱出に必要な駆動トルクの大きさは、色々な条件で変化するので大きさは一定ではありません。
1. 実走行による試行錯誤で適正なイニシャルトルクを求めます。
2. 高めのイニシャルトルクを設定して、使用時間の経過とともにイニシャルトルクが低下することを利用します。
3. 空転を止めたいコーナーで空転し始めたら、その時のイニシャルトルクを計測する。
4. 空転時のイニシャルトルクの値よりも大きなイニシャルトルクに調節する。
メタルLSDの場合は10~20kgm、カーボンLSDの場合は30~40kgmの範囲で設定する。
5.イニシャルトルクを上げるには時間と費用がかかります。また、空転を解消するメリットと周回タイムが遅くなるリスクもあります。これらを十分に考慮して対策をお考えください。

■イニシャルトルクを上げる前に試すべき空転防止策。
1.そのコーナーに対する進入ライン、走行ラインなどを変更する。
2.大きな惰力をつけてそのコーナーを抜けて空転時間を短くする。
3.できるだけ高いギヤで通過する。
4.タイムダウンのリスクが無い高イニシャルトルクのカーボンLSDに変更する。

 

■LSDにとって空転は破壊の入口
空転無しで通過する場合のタイヤ回転数の2倍で空転するので、空転していたタイヤが接地した瞬間に半分の回転数に急減することになります。さらに、空転したときにアクセルを開くと、いかにも接地時の加速を期待できそうです。しかし、そのような加速を空転時にすると接地の瞬間に駆動系に衝撃を与えて破壊するリスクを高めます。しかも、片輪が高速回転しているだけで大きな加速は望めませんし、接地の瞬間に直進性を危うくする可能性もあります。しっかり着地してから加速しましょう。


ご説明のとおり、空転を確実に止めることができるほどイニシャルトルクを上げると、他のコーナーでアンダーステアが発生する場合があります。メリットとデメリットを考えて、デメリットが大きいようであればLSDでの空転対策は中止すべきです。

この空転は、レースだけではなく市街地走行や登坂路などでも発生します。このような場合でも、LSDで対策するにはイニシャルトルクを一定以上に大きくする必要があります。そうするとメタルLSDは騒音の心配をしなければいけません。その点で、カーボンLSDであれば30~40kgmのイニシャルトルクでも騒音は出ませんので、ご安心ください。このような環境で空転をされている方は、カーボンLSDをお求めください。きっと、ご満足いただけます。

今日のお話は、これで終わります。
それでは、皆さん、次回もまたよろしくお願いいたします。


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